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涅槃(ねはん)

仏教徒のめざす,釈尊(しゃくそん)(ブッダ)が到達した悟りの完成した境地。サンスクリット語のニルヴァーナとは「吹き消された」の意味で,生死に迷い苦しむ世界を超える知恵を得て,煩悩(ぼんのう)の炎が消え,心身の安定した静寂の状態に達したこと。部派仏教においては,阿羅漢(あらかん)となった人が解脱(げだつ)とか菩提(ぼだい)という悟りに達するとされ,また,釈尊が生前に得た悟りの境地を有余依(うよえ)涅槃と呼び,没後に肉体を失った時点での境地である無余依(むよえ)涅槃と区別する。大乗仏教では,常,楽,我,浄の四徳を具えた積極的な理想の境地とされ,法身(ほっしん),法性(ほっしょう),真如(しんにょ)などが同義語とされる。のちに意味が転じて,人の逝去,他界を「入涅槃」とか「入滅(にゅうめつ)」というようにもなった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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