農奴解放(のうどかいほう)
農民を特定の農奴身分規定から,ないしは領主制支配それ自体から解放する措置。・〔ヨーロッパ中世〕古典荘園が崩壊して新しく農村共同体が成立する過程で,旧来の一部農民の農奴身分規定を廃して,均質的な隷農層を創出するためとられた措置で,12,13~16世紀のフランスでみられた。・〔フランス革命期〕manumission いっさいの身分的負担とともに,封建地代そのものから農民層を解放する措置で,1790年に有償解放が決められたが,93年7月17日の法令で無償解放となり,農民は完全な土地所有者となった。・〔プロイセン〕Bauernbefreiung 対ナポレオン戦争の敗北からの再建のため,1807年から開始した措置で,19世紀中葉まで続く。一般にシュタイン‐ハルデンベルクの改革といわれる。農民は,改革前の身分規定によって,保有地の3分の1ないし2分の1を領主に割譲することによって自作農となるが,このため農民の多くは事実上の賃労働者に転落した。・〔ロシア〕osvobozhdenie krest'ian 1861年2月19日に,アレクサンドル2世が発した措置で,領主制を原則的に廃止するものであったが,プロイセン以上に農民に苛酷な条件であり,土地を失った農民は,離村して労働者となるか,土地買い戻しによって債務を負った。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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