暦(れき)
Calendar 日常生活の必要から時間を日,週,月,季節,年に区切ること。太陰暦と太陽暦のほかに,太陰暦を季節変化などの観察で修正した太陰太陽暦がある。一般に太陰暦といわれるもののほとんどは,実はこれに属する。月(29.5日)は早く知られたが,これと太陽年(365日5時間48分46秒)との関係は容易に発見されなかった。そのなかで古代エジプト人は,季節的にきわめて規則的なナイル川の氾濫に依存する灌漑農業を営んだ関係上,非常に早い時期(前5千年紀後半ともいわれる)に太陰暦から30日×12+5祝日=365日の太陽暦(民衆暦)に移行した。その後,年首とされた「ソティスの朝出」(日の出直前の東天にシリウスが出現する現象で,ナイル増水の直前に起こる)の周期が1太陽年に相当し,これと民衆暦の1年とは4年に1日の差を生じるが,4×365=1460年たつと再び一致することが発見され,その日には大祭が催された。このエジプト系太陽暦は,その後ローマのユリウス・カエサル(前46年,ユリウス暦),教皇グレゴリウス13世(1582年,グレゴリウス暦)の改暦をへて,現在世界的に採用されている。メソポタミアでは少なくとも前1千年紀には太陰太陽暦が使用され,新バビロニアのカルデア人は19年に7回の閏(うるう)年を置いた。ギリシア暦,インド暦はこれにもとづく。カルデア人はまた主要天体七つを配列して週をつくり,ユダヤ人をへて現在に伝えられる。中国,日本も太陰太陽暦を使用していたが,日本は1872年,中国は1912年にそれぞれ太陽暦を採用した。イスラーム諸国で用いられているヒジュラ暦(イスラーム暦)は,本来の太陰暦である。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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