サティー
寡婦殉死。語義は「貞節な妻」。本来は殉死する寡婦のことをさす言葉だが,慣習の意味にも使われる。夫が死んで荼毘(だび)に付されるときに,寡婦も一緒に焼かれて死ぬ,ヒンドゥー教の慣習のこと。戦士階級の古い慣習が,中世になって広まったと考えられる。ヒンドゥー教では妻は夫に献身する存在とされるので,殉死する寡婦は妻たる者の模範であり,家に功徳をもたらすと考えられた。19世紀初めの調査によれば,年間600件程度の事例がみられた。これに対してラームモーハン・ローイは,1815年から禁止運動を進め,植民地政府は法律によって29年に禁止した。しかし慣習は根強く残り,現在でも稀に行われることがある。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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