禅(ぜん)

禅那(ぜんな),禅定(ぜんじょう),静慮(じょうりょ)とも漢訳される。瞑想(めいそう)により心身を静かに安定させ精神統一を図る修行方法。古くインドにあった身体ヨーガ的瞑想法として釈尊(しゃくそん)(ブッダ)自身も重んじ,仏教の修行実践の重要な要素となった。6世紀の中国に菩提達磨(ぼだいだるま)により般若空(はんにゃくう)にもとづく本格的坐禅が伝えられ,五祖弘忍(こうにん)の門から,段階的に悟りを深める漸悟(ぜんご)を説く神秀(じんしゅう)の北宗(ほくそう)禅と究極的悟りに直入する頓悟(とんご)を説く慧能(えのう)の南宗禅の2宗風が生まれた。慧能は文字に頼らず直感的体験重視の不立文字(ふりゅうもんじ)を唱導し,この系統に五家七宗が形成される。日本では鎌倉時代以降に,公案に則り知恵の開発をめざす看話(かんな)禅系の臨済(りんざい)と,黙して坐する黙照禅系の曹洞(そうとう)の2宗が興隆し,江戸時代に黄檗宗(おうばくしゅう)が加わる。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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