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勢力均衡(せいりょくきんこう)

balance of power 国際関係において力が適当に分散している状態(勢力均衡の状態)を基本的に維持することにより,圧倒的優位を追求する国家の出現を阻むとともに,自国もまたそのような優位の追求を自制するという行動原理(勢力均衡の原理)をいう。近世ヨーロッパにいくつもの主権国家からなる国際社会が形成されるとともに現れた観念。スペイン継承戦争ののち,ユトレヒト条約の関連文書で,英仏は勢力均衡を平和のために尊重することに同意した。しかし均衡状態の判断基準は曖昧であるから,相互の信頼がない場合には均衡の追求が緊張を高め戦争をもたらす危険がある。第一次世界大戦の際,アメリカ大統領ウィルソンはこの戦争をヨーロッパ諸国の勢力均衡策の破綻とみなし,国際連盟を中心とする国際協調秩序の形成を訴えた。なお国際秩序が比較的安定するのは,勢力均衡ではなく,卓越した力を持つ覇権国(19世紀のイギリス,20世紀後半のアメリカ)が存在する場合だという見方もある。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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