正統カリフ(せいとうカリフ)
正統カリフとは,ムハンマド死後の最初の4人のカリフ(アブー・バクル,ウマル,ウスマーン,アリー)に対する,後世のスンナ派の呼称。その統治期を正統カリフ時代という。この時代に行われたアラビア半島の再統一と大征服活動によって実質的にイスラーム世界が成立し,またイスラーム社会の基本的な社会制度と統治体制が形成された。その一方で,大征服後の遊牧部族間の利害対立が,メディナ政府の路線対立に反映し,ウスマーンの暗殺に至る政治的な亀裂を生み出した。後世のスンナ派はこの時代を,預言者ムハンマドの死後,イスラームの理念が最も理想的に実現していた時代と理解する。これを継承して,近現代のサラフ主義者は正統カリフ時代への回帰を志向。一方,シーア派主流は,最初の3人のカリフを,アリーの正統な後継権を簒奪したものとして忌避する。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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