人民戦線(じんみんせんせん)
Front populaire[フランス],Frente popular[スペイン] 1934~36年頃,ファシズム諸国の脅威と,各国内のファッショ的勢力台頭に対抗して結成された左翼の連合。その最大の特色は,各国共産党がブルジョワ民主政打倒の方針を一変し,社会民主主義諸党のみか,左翼中産階級諸党とも提携した点にある。共産党の戦術転換の真の理由はまだ断定しがたいが,ヴァイマル共和国崩壊の経験もさることながら,ドイツの進出に脅威を感じたソ連の反枢軸大同盟政策の一環とみるべきであろう。35年夏のコミンテルン第7回大会で,この新方針は公式に承認された。他方,社会党や中産階級諸党の側では各国内のファッショ的勢力の台頭が共産党との提携に踏み切らせた。フランス,スペイン以外では,人民戦線運動は十分実を結ばなかったが,中国では抗日民族統一戦線として実を結んだ。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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