1. 用語
  2. 世界史 -し-
  3. 市民社会(しみんしゃかい)

市民社会(しみんしゃかい)

概念的には,国家と区別され,国家に吸収されない社会生活のレベルをさす。元来,ヨーロッパ古典古代の政治哲学では,家政は私的とされながら,政治組織から区別されず,市民社会と政治社会は同義だった。18世紀ヨーロッパで初めて,国家と区別される自律的領域としての市民社会の概念が生まれたが,経済的規定と政治的規定がある。前者はヘーゲル,マルクスが代表的で,その国家との関係の捉え方は正反対だが,利己心を原動力とする交換,労働などの経済領域とみなす点では共通。後者は,国家の専制から自由を保障する領域とみなし,モンテスキュー,トクヴィルが代表的。このように概念内容が異なり,前者の場合には「ブルジョワ社会」と同義であり,後者の場合には「民間公共社会」の訳語があてられることが多い。ところが,日本では「ブルジョワ」が「市民」と訳される慣習があるため,この概念が歴史に適用されたとき,混乱が起こる。例えば,市民革命の目標は資本主義(経済的市民社会)か,「民間公共社会」(政治的市民社会)かが明確でない。日本の戦後歴史学の特徴は,二つが一致すると考えた点にあった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

この記事が気に入ったらいいね!しよう