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史学史(しがくし)

歴史学の歴史をさす。歴史叙述は東洋,西洋の古代から存在するが,歴史が宗教,物語,道徳をはなれて学問となったのは,文献学の進んだ18世紀のヨーロッパであり,特に19世紀のドイツでは,ランケによって史料批判にもとづく近代歴史学の観念および研究方法が樹立され,各国の大学に影響を与えた。その観念は当時の支配的風潮である国民国家の建設と不可分であり,国民国家を単位とする政治史,外交史がアカデミズム歴史学の内容となった。これに対して,19世紀末の産業社会の発展,労働運動の興隆につれて社会経済史が大学,民間でしだいに盛んになり,マルクス主義もこの風潮のなかで力を増してきた。歴史研究は隣接科学の方法を採り入れるようになり,20世紀には社会学や人類学の方法を入れた「社会史」,さらには「心性史」の分野が開発された。この新傾向には,フランスの「アナール学派」の功績が大きい。旧来の「政治史」が出来事中心の叙述となる傾向があるのを批判して,新しい「社会史」は構造分析を重視するが,近年は政治史の再評価に傾いている。日本では,明治初期に英米の啓蒙的な「文明史」が民間史家に,ついでランケ史学が大学に導入されて近代史学が始まった。ついで,ドイツ歴史学派経済学,マルクス主義の影響で発展段階論が強まったが,西洋中心主義の発想から脱しなかった。第二次世界大戦下には,一時「皇国史観」が力を得たが,戦後はマルクス主義とヴェーバー主義を組み合わせた「戦後歴史学」が支配的となった。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)

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