スペイン
イベリア半島の5分の4を占める国家。先住民はイベリア人。前1000年頃からケルト人が移住を始め,フェニキア人,ギリシア人も地中海岸に植民した。前3世紀末ローマ領となりローマ化されたが,5世紀にスエヴィ,ヴァンダルが侵入し,6世紀には西ゴートがトレドを首都に王国を建設した。その後アフリカからイスラーム勢力が侵入し(711年),全土を征服した。後ウマイヤ朝時代にはコルドバを首都に文化の繁栄をみた。13世紀からキリスト教徒のレコンキスタが起こり,15世紀末カトリック両王期にはスペインの同一王朝支配が成立し,ユダヤ教徒,イスラーム教徒を追放し宗教的統一が実現した。コロンブスのアメリカ到達に続いてアメリカ大陸を征服,植民し,ハプスブルク朝のカルロス1世とフェリペ2世の時代にスペインは「太陽の沈まぬ国」としてヨーロッパに君臨した。しかしネーデルラントの独立反乱に苦しみ,無敵艦隊の敗北で海上権に大打撃を受け,ピレネー条約(1659年)でフランスに覇権を譲った。18世紀にはスペイン継承戦争の結果,ブルボン朝が誕生し,カルロス3世のもと啓蒙改革が実施された。ナポレオンに征服されると,スペイン独立戦争(1808~14年)を起こし近代憲法を制定したが,絶対主義が復活した。19世紀を通じて不安定な政情が続き,数回の内乱と革命を経験し,アメリカ‐スペイン戦争によってキューバ,フィリピンを失った。20世紀にはカタルニャやバスク地方の地域ナショナリズムが台頭し,政治不安に加えて労働運動が激化した。プリモ・デ・リベラ独裁ののち,第二共和政が成立して政教分離を果たし社会経済改革に着手したが,左右の対立が深まってスペイン内戦(1936~39年)に至った。これに勝利したフランコの独裁体制は1975年まで続くが,その後は民主化に成功し,86年にはヨーロッパ共同体(EC)に加盟して現在に至る。 (山川 世界史小辞典(改訂新版), 2011年, 山川出版社)
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